筋力発電所

体育科学系 長谷川 聖修

2074年、筑波大学は100周年を迎えた。が、ついに化石燃料は底をつき、原子力発電もその安全性が疑問視され利用されなくなった。
エネルギー危機に見舞われた筑波大学では、学長より体育科学系へ緊急指令が下された。
すべてのトレーニングマシンに運動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置が搭載されたのだ。
筋肉隆々とした体育の学生達が日夜自転車こぎやバーベルを挙げる運動に励みながら発電活動に汗を流す。
トレーニング場は学内の電力をまかなうための貴重な発電所となった。
学生達は、筋力トレーニングと同時に自分の作った分の電気を大学に買い取ってもらうアルバイトができて、それは大喜び。
まさにこれこそ「一石二鳥」..?
本来、身体活動は生産的なものであったはずだが、昨今のダイエット・ブームに象徴されるように、口から取り入れた栄養分を体を動かしてカロリーをどれだけ消費するかにばかり気をとられている。
確かに、これまでの体育は、文明の恩恵がもたらした機械化・省力化による「運動不足」を補うことでその役割を意義づけられてきた。
しかしながら、例えば、日常生活で車を利用して招いた運動不足を、電動のトレッドミルの上で走って補うという現代人の姿は、エコロジカルな視点から見ればエネルギーの2重浪費でしかない。
体育の学生でさえ、課外活動などで「運動過剰?」なのか、日常生活では体を動かすことを極力避け、すぐ近くのキャンパスへも車やバイクで乗り付け、2階へ上がるのも階段を使わずエレベータが来るのをじっと待っている。
日本人ひとりが車や電気を消費して暮らすエネルギー量は、象一頭が自然界で生息して消費するエネルギー量に匹敵するという研究報告がある。
本当に必要なダイエットとは、自己の肉体ではなく、外力に頼りっぱなしで象のような巨体をもつ現代人のライフ・スタイルそのもののはずだ。
21世紀における体育分野の使命は、普段の暮らしの中で体を動かすことを「いやがらない」人々を増やすことではないかと個人的に感じている。
もちろん、本 音の部分では「好き」になってほしいが、少なくとも身体運動をいとわない暮らしぶりを実現することが具体的な行動の第一歩だと信じている。
「オゾン層があ るうちに、スポーツしよう」と呼びかけたスポーツデーのテーマが現実にならないために、Think Globally , Act Locally!

史上最強のエコロジカル・カー
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ガソリン不要 但し、ご飯を食べる
しかし、このエンジン、最近は 恥ずかしがって乗ってくれない

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